セキュリティ系エンジニア。IT技術について書いているふりをしています。
by neo_logic
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【社会科学の世界】南部スーダン独立に関する簡単な説明
南部スーダンが独立するちゅう話なので、
ここがどういう地域なのか、簡単に説明します。

この地域については詳しくない人が多いようなので、
まずは地図をどうぞ。ダルフールってのは別の紛争があったところです。

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【超特急の歴史】

1898年、ええと日本では日清戦争と日露戦争の間ですか。
そのころ、この地域はイギリスとエジプトによる共同統治をやってました。

1955年、東西冷戦がそろそろ派手になってきたころですね。
スーダン南部で反乱が起きて内戦が始まりました。

1956年、スーダン共和国として北部と南部が統一して独立しましたが、
北部が偉そうなので南部はおさまりません。

1972年のアディスアベバ合意で南部はようやく自治権を獲得、
長い内戦は終わりました。

ところがです。



【内戦が始まる】

1974年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンラモンに本社を置く石油関連企業、
シェブロン社が、なんとこの地域に油田を発見してしまいました。
北部住民たちはこれを知って色めきだちます。

1983年、時のスーダン大統領モハメド・アン=ヌメイリ政権は、
南部の自治権や将来の分離独立の住民投票を蹴っ飛ばしました。

その背景にはハッサン・アル=トゥラビ率いる政治団体、
民族イスラーム戦線の圧力がありました。

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ハッサン・アル=トゥラビ



アラブ系イスラーム
が多い政府はこの地域の法律に
イスラーム法シャリーアを導入してイスラーム勢力の取り込みを図り、
南部の州を分割しました。

黒人系キリスト教徒
の多い南部はこれに大反発を起こし、
南部の最大勢力ディンカ族のジョン・ガラン大佐を中心として、
スーダン人民解放軍/運動 (略称はSPLA/M) が挙兵します。

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ジョン・ガラン



【内戦が泥沼化する】

そこにウガンダの内戦やダルフール紛争といった周辺地域の紛争も加わり、
だんだんわけがわからなくなります。

1989年、オマル・アル=バシールがスーダン政府の大統領になると、
SPLA/Mに反撃を開始し、戦闘は恒常的なドロヌマ状態に陥ります。

1995年頃の情勢を整理しましょう。

政府側(主にアラブ系)           南部側(主に黒人系)
スーダン政府(国民会議)        スーダン人民解放軍/運動 (SPLA/M)
民族イスラーム戦線            正義と平等運動
ウンマ党            VS     東部戦線
民主統一党
遊牧部族ミッセリア            エリトリア多党派連合国民民主同盟
神の抵抗軍                 ウガンダ人民国防軍

なんつーカオス。これ整理じゃねえよ。

なお、民族イスラーム戦線は正義と平等運動とも内通しているという
ウワサもあり、実態はより複雑です。

ともかくこうして、内戦が再開してしまったのです。

約190万人が死亡し、400万人以上が家を逐われました。
これは第二次世界大戦以降でもかなり大規模な死傷者です。


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対立勢力の襲撃に備えて武装する住民




【終結と今後】

2002年、ケニアで南北の和平交渉が成立します
2005年、南北包括和平合意(CPA)が署名され、6年間の自治と
イスラム法の不適用を決定しました。

そして2011年1月9日、本日。ついに独立を住民投票で決定することになりました。
現在のところ、独立は達成できそうです。


国連はこの選挙において、俳優ジョージ・クルーニーの提案で、
衛星を使ってこの投票で紛争が起きないかを監視し、
また各国から多数の治安維持部隊が入りました。

日本の菅内閣も、国際平和協力法に基づく監視団を派遣しました。
現在、外務省や内閣府職員、自衛隊員らが現地入りしました。
21日に帰ってくるそうです。

しかし、独立が決定したとしても、まだまだ課題は残されています。

たとえば、激戦地となった中部の油田地帯アビエイについて、
当然、南北双方とも自領への組み入れを狙っています。

で、南北どちらに帰属するかを投票で決める予定なのですが、
そこで「アラブ系遊牧部族ミッセリアは有権者なのか?」が重要になります。

ミッセリア自身は北への残留を主張していますが、
なにぶん季節によって移動するので難しい状態です。
この人たちの投票で事情が大きく変わるので油断できない。

そんなわけで、住民投票は延期。
アビエイは帰属が決まっていません。

対立が続けば、北の支援を受けるミッセリアとSPLA/Mが再度衝突かも・・・・・・
とも言われています。

さらに大統領が、「南部が独立したので北部はイスラム法シャリーアを強化する」
と言った事も問題になりそうです。北にも非イスラームがいるので、反発は必至です。

南部であまった武器の問題もあります。
西部ダルフール地方で戦っている反政府勢力に流れるという話もあります。

なんとか平和に解決がつけばいいのですが。




というわけで、南部スーダンの簡単な解説でした。

アフリカには豆腐が無いのでギャグもオチもありません。
ではまた。
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# by neo_logic | 2011-01-09 10:33 | 社会科学の世界
【映画評】 シベリア超特急 1996年/日/100分/カラー
一部のカルト映画好きに、たまらない作品として評判のこの作品。
ずっと見たかったのに見てなかったんですよ。いやー、期待通り。

キル・ビルを超えたぶっ飛び映画を久々に見た。
すげーよ、水野。

「映画って、ほんっとうに難しいですね、作るの」という自覚一切無し。
これを傑作だと思い込めるその天然なセンスがうらやましい。

内容がいかに酷いかは、もう、先達が散々書いているので、
ここではわざわざ触れません。

ただ、パロディ要素満載だったので、30年位前から、
映画を腐るほど見てて、もう映画に何か新しいものも見出すことは絶対にない、
とか思っている人には何かがあるかもしれない。

結局ね、水野さんってたくさん映画見てるわけでしょう。
だから全体を見てると明らかに破綻してるんだけど、
要所要所におっ、と思うところは結構あるわけですよ。
特にヒッチコックとポワロ見てる人には。

逆に言うと、白黒時代のアメリカ映画・ポーランド映画見てないと、
ノリに全くついていけないと思います。
それでもいいし、そこを勉強してから見る価値も無いけどね。

仲間で集まって、朝まで徹夜して映画の話題で盛り上がってる気分。
これはこれで、時間損したとは思わなかった。

もちろん、この映画をいい映画だと言う気はさらさらないが。


【評価】

監督:水野
脚本:水野
演出:水野
得点:水野に敬意を表して0点。
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# by neo_logic | 2009-02-15 14:22 | メディア評
【世界の武術】 第8回 躰道
いままでの動画などを見て思ったかもしれませんが、
武道というのは意外に地味なものです。

武道はもともと、いかに要領よく敵をやっつけるかが目的ですから、
シンプルに大きな効果を発揮する方向に発達していくのは、ある意味当然です。

しかし、それが武道の全てでしょうか?
とりあえず簡単な反論だけでも、3つくらいは考え付きます。

1.動きが地味だと言う事は、対策も立てやすいという事です。
  柔道にしろ空手にしろ、総合格闘技やキックの選手から見れば、
  「ふうん、この技が強力だな。じゃ、こう対策しようか」
  ということが簡単にできてしまいます。

2.地味な動きということは、運動量が少ないということです。
  心肺能力や柔軟性、瞬発力を鍛えるという観点から見ると、
  武道の基礎練習は、テニスやサッカーの試合よりも運動になりません。

  じゃあスパーリングかというと、今度は消耗が激しいので、
  ゴルフやスキーのように、一日楽しくやるわけにはいきません。

  それはスポーツとしてはどうなのでしょうか?
  若い青少年であれば、「今日は一日、全力で飛び跳ね、汗を流したい!」
  と思うのではないでしょうか? 

3.当たり前ですが、地味だということは、
  大してカッコよくないということです。

  しかし、武道と聞くと、地味なイメージでしょうか?
  武道をやるとき、「護身・健康・精神修養のためです!」
  と口では言っていても
  「本当はカッコ良い技を身につけてモテたいんだ!」
  という人もいるのではないでしょうか?


もちろん、これらの動機を卑怯だ、無意味だ、邪道だ、という人もいます。
武道はストイックに背負い投げや正拳突きを1000回やるものだ、
と言う人もいます。それはそれで結構です。

しかし、そうでは無い人に対して「キミは武道に向いてないね」
などと言うほど、武道は狭苦しいものではありません。

今回は、
「奇襲技を身につけたい!」
「楽しく汗を流したい!」
「カッコいい技を身につけたい!」
という人に向いている武道を紹介します。

それが躰道です。



【躰道とは何か】

躰道は、空手の一派である玄制流空手道の祝嶺正献が、
昭和40年に発足した、新しい武道です。

海外も含めると、競技人口は数万人以上と考えられます。
現在は、ヨーロッパでも人気があるようです。
競技者の半数が女性という、珍しい特徴があります。

最大の特徴は、アクロバット的な攻撃を繰り出すところにあります。
技術は八種類の歩き方(運足)と、五種類の体の操り方(操体)に分かれていて、
試合形式はこの技術を使うために作られています。

これらの動きはどれも極めてダイナミックです。
多くの日本武道には含まれていない、
伏せてからの蹴りや跳躍しての突き、バク転、転がるなどの
三次元的な動きがあり、体操競技の床運動に似ています。

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躰道の試合




【躰道の歴史】

昭和20年第二次世界大戦の末期、祝嶺正献(しゅくみねせいけん)氏は、
特攻隊員として、沖縄近海で作戦中の敵艦に攻撃するよう命令を受けました。

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祝嶺正献
1926-2001



祝嶺は懸命に考え、旋・運・変・念・転という運動を基にして、
三次元の運動空間に適応できる実技を編み出しました。

そして終戦。昭和21年には大分県の山中、23年には沖縄の無人島で
多くの技術を創作し、24年には静岡県で実技を初めて公開。

以降は大学・自衛隊・企業など120あまりの関係道場で、
基礎的な内容を整え、37年に各技をまとめ、躰道と名づけました。

そして昭和40年には、相対(敵に向かう)原理、相剋(敵と対立する)原理、
体気(呼吸法)、法形(型)、経絡(急所)などの気学や陰陽道など、
古典的な民間療法に、近代科学を取り入れて集大成しました。

躰道を見ると、実戦から離れているように思うかもしれませんが、
実は、戦争という最も実戦的な状況から生まれた武道なのです。



【躰道の技術 -無尽蔵の突き蹴り-】

躰道には、名前のついている突き蹴りの技術数だけでも、
おそらく他武道の3倍以上の量があります。

そのベースになっているのは、旋・運・変・捻・転です。
非常におおざっぱに言うと、横回転、跳躍、倒れる、倒れながら横回転、宙返り
といったところです。

これらの動きに、突きと蹴りを組み合わせるため、
躰道の技法数は膨大な量になるのです。

「こんなにあっても、ほとんど役に立たないんじゃないのか?」
と思われるかもしれません。

しかし、そもそもの話ですが、普通の突き蹴りは対策が立てやすいのです。

これに対して、躰道を完全に対策するのは、ほとんど不可能です。
一つ一つの技術に対して、対策を立てることは簡単かもしれませんが、
これら全てを対策するということは、とてもできません。

そして、知識や経験に無い技術というのは、一度命中してしまうと、
大きな身体的、精神的ダメージを受けてしまうものです。

次の動画を見て、初見で対応できるかを考えてみてください。

なぜか躰道の動画は音楽がかかってるのが多いのですが、
まあそこは気にせずで。

躰道はまた、型競技も行なっています。
単独競技もあるのですが、「展開」と呼ばれる一対多の技術が華やかで、
人気があります。

以下が、躰道の展開競技です。




【躰道を習いたい】

躰道の名前を初めて聞いた方もいると思いますが、
大学をはじめ、道場も意外にたくさんあります。
特に医療系の大学にはかなりあります。これは組織の方針だそうです。

地方には少ないかもしれませんが、どうしてもやりたい場合は、
大学の部活に参加できないか、聞いてみるといいでしょう。

躰道は、まず体を動かすのが好き、という人に向いているでしょう。

跳んだり跳ねたり回ったり転がったりするわけですから、
それが好きかどうかで決めるのがいいと思います。
特に体操の経験があり、かつ武道をやりたい人にはうってつけです。

もしくは、体を動かせるようになりたい、という動機がある人です。
身体能力全般が向上するので、「青少年の育成」という観点から言えば、
極めて優れています。女性も多く、比較的年配の方もいるのはこのためです。

宙返りやバク転というと、事故が怖いと思うかもしれません。

しかし、躰道はそれらの技術が中心にすえられているため、
指導法はかなり高度に確立されています。

躰道で事故を起こす可能性は、体操のジムで事故を起こす可能性よりも
むしろ低いかもしれません。

このほか、他の武道をやってきたが、独特な技術を身につけたい、
格好いい技術を学びたい、という人にも向いています。

一方、スパーリングや乱捕り稽古が目的の人には、
宙返りの練習などが面倒に感じるかもしれません。
好みは分かれるでしょう。



【躰道で戦う・躰道と戦う】

躰道の技術は、決闘や喧嘩などでも有効でしょうか?

躰道の試合は、躰道の技術をどこまで使えているか、が採点基準になります。
そのため「実戦」と呼ばれる組手競技はライトコンタクトのポイント制です。
KO前提ではありません。

したがって、一般的な武道を相手にする場合は、
まず、躰道の技術で一撃KOを狙えるまで、威力を高める必要があります。
おそらく、これが躰道で戦う上で、最も高いハードルとなるでしょう。

躰道の複雑な技術は、ローキックやストレートパンチに比べると、
どうしても威力を上げるのが困難です。しかし、不可能ではないはずです。
KOできる威力が身につけば、他の武道に伍して戦うことができるでしょう。

一方、躰道以外の技術で躰道を相手する場合、
素人であれ達人であれ、必要なのは、まず慎重になることです。

闇雲に攻め落とそうとして、見たこともないカウンターを
ピンポイントで食らうと、それで一気に意気消沈してしまいます。

ただし、逆に怖がりすぎて、想像していない先手を取られてしまうのも
禁物です。慎重になるというのは、カウンターを狙えという意味ではありません。

腰を落として顔をガードし、自分の得意な技術で先手を取るようにしましょう。
躰道の攻撃はたしかに多彩ですが、防御まで多彩なわけではありません。
平常心で戦えば、そこに勝機が見出せるでしょう。



【オマケ】

アメリカのTV番組で放送された、躰道の紹介

なぜこれがオマケなのかというと、私の友人が映っているからです(笑)。
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# by neo_logic | 2009-01-28 22:24 | 世界の武術
【映画評】レッドクリフ Part I/2008年中香日韓台/145分
いまさら見てきた。
やっぱり三国志好きですから。

予想をはるかに上回るド直球。
ジョン・ウーの頭の悪さを余すところなく感じられる、
理屈抜き大作であった。

二部作にする必要のない冗長な内容、
甘婦人の扱いの悪さ、
まぶしくて死ぬ雑兵、
虎の前に主君を放り出す家臣たち、
どうでもいい恋愛シーン、
もうちょっとカメラを引いて欲しいアクション、
など、全く気にならないくらい、勢いで突っ切る潔さが見事である。

とりあえず、「八卦の陣」は「八卦炉の形をした陣」ではありません。

監督:バカ
演出:バカ
脚本:三国志
役者:上手い
評価:75点

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# by neo_logic | 2009-01-04 12:31 | メディア評
【世界の武術】 第7回 日本拳法
前回さっぱりコメントがつかなかったので、さっさと次に行きます。
少林寺にはあまりなじみが無い人が多いのかね。
全然関係ないけど、やざきさんお元気ですか?


【日本拳法とは何か】

日本拳法は、柔道から派生した武道です。
空手や相撲の影響も受けています。

競技のルールは、
防具(面・胴・股当その他)とグローブを着けて、突き、蹴り、関節技を駆使して
勝敗を争います。総合格闘技に近い側面を持っています。

日本拳法の防具は剣道の防具をもとに考案されており、特に面が剣道そっくりです。
知らない人が見ると、竹刀を忘れた剣道かと勘違いすることがよくあります。

中央大学に在学していた知人に日本拳法家がいるのですが、
彼と話していたときに、
「友達に試合の写真を見せたら、『これ、なんの冗談だ?』と言われたよ」
と言って笑っていたことがありました。

日本拳法の試合
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ルールは防具の上から全力で打ち合う直接打撃制です。
道場の稽古では防具を使わない場合もあります。

日本拳法は自衛隊の徒手格闘の大会ルールとほとんど一致しています。
警察の逮捕術、警備員の護身術にも大きな影響を与えています。

また、実戦志向で有名な大道塾空道の大会において、
他流派では総合格闘技以外の選手がほとんど活躍できていない中、
唯一、日本拳法の選手だけは上位に食い込んできています。

日本以外にはほとんど普及していませんが、
日本拳法の上位選手には、総合格闘技、キックボクシング、ボクシングなどに
転向して大きな成果を出している選手も多く、今後も活躍が期待されます。



【日本拳法の歴史】

日本拳法は、1932年(昭和7年)に、関西大学出身の柔道家である、
澤山宗海によって創始考案されました。

澤山は、重さ70キロの鉄アレイを楽々と持ち上げるほどの怪力で、
腕は丸太のように太かったと言われています。

戦中は軍人として活躍し、戦後は新しい武道のために尽力しました。

澤山宗海
1906 ― 1977
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「新しきを知るも、古きを識らざるは、進歩にあらず。
 外に得るも、内に持たざるは、進取にあらず」


を合言葉に、日本古来の空手、柔道、相撲から
無駄な部分を取り去り、自由に練習する方法を考えました。

そして、突打蹴の博技(打撃技)に対して、防具を着装して、
安全に、かつ自由に打ち合う乱(らん)稽古によって、試合を可能にしました。
拳足の技に対する防具の創案は、有史以来初めてでした。

澤山はあまり経済的には恵まれなかったらしく、
自分の道場を持つことはできませんでした。

その代わりに、本を残そう。そして、温故知新の主旨のもとに、
東洋の古典と現代心理学、生理学等をアレンジして、拳法を科学的に究明しよう。
という考えの下、毎日新聞社から「日本拳法」という書籍を刊行しました。

それまでの古流柔術、伝統派空手諸派は、秘伝の技を見られるのを嫌がり、
柔道以外には、あまり良書がありませんでした。
そのため、このような打撃の技術に関して公開する姿勢は、
日本武道史に残る革命的な行為だったと言われています。

その後、澤山門下である森良之祐は東京で日本拳法を広め、
自衛隊の徒手格闘技制定に深く関わっています。

森は後年独立したため、現在の日本拳法は大きく分けて、
関西の拳法会系(+連盟系)、関東の協会系と呼ばれることが
多いようです(細かく言うともっと多い)。

森師範が、生前に講演されていたのを聴いたことがありましたが、
とても穏やかな、落ち着きのある話し方をされる先生でした。

武道精神とは流派に閉じこもることではなく、多くの人と拳を交え、
豊かに生きるためのものです、とおっしゃっていたのが印象的でした。



【日本拳法の技術 -殴って投げてまた殴る-】

日本拳法の看板技は、直拳(ストレートパンチ)と直蹴(フロントキック)です。
この技術は、形だけを身につけるなら、最も簡単な部類に入るでしょう。
ですが、これを徹底して磨くところが大きな特徴です。

さらに日本拳法には投げ技があり、とどめの突き、関節技があります。
要約して言うと、日本拳法の試合とは、殴って蹴って倒してまた殴る
というものだと言えるでしょう。

ある意味、もっとも見栄えを切り捨て、実を取った武道だと言えます。

日本拳法


なお、打ち合いについてはパシンと一発入ると得点、
というところが伝統派空手と似ています。

このため、フルコンタクト空手のように、殴り続け蹴り続け、という試合にはなりません。
伝統派空手の読みあいのような要素もあります。

以下は大会の様子です。




【日本拳法を習いたい】

日本拳法の道場は、関東圏と関西圏以外ではあまりありません。
大学の部活としても、大きな私立大学以外には見られません。

ただし、自衛官になると、ほぼ同等の技術を習うことができます。
警察官や警備員も、似たような訓練をすることはあるようです。

職業として格闘する人のためのもの、という側面が強いので、
趣味や体操代わりにいいかと言われると、なんともいえません。
やるからには覚悟を決めてやったほうがいいと思います。

日本拳法をやる場合、格闘技をやることとほとんど同義と考えたほうがいいでしょう。
重い防具を装着して打ち合うので、練習は、時に総合格闘技のジムよりハードです。

事故もゼロではなく、倒れて頭を打つなどもないとは言えません。
ただし、防具のおかげで、打ち身や骨折などは比較的少なくおさえられています。
無理を押して参加するなどは控え、出来る範囲で努力しましょう。



【日本拳法で戦う・日本拳法と戦う】

あくまで私の個人的な交流範囲の話ですが、
日本拳法の選手は総じて強いです。

特に、道場で防具をつけずに練習している選手は、
近代格闘技の選手と遜色ありません。

これは突く、蹴る、投げる、寝技の全てが競技ルールに含まれており、
かつ、曲芸のような技術が、体系から大胆に排除されているためです。
競技スタイルも、比較的現実的なシーンに近いものとなっています。

さらに、練習には体力や体格を要求しますので、
競技者の身体能力は、比較的高く維持されています。

一般に知られる格闘技的な武道は、フルコンタクト空手ですが、
フルコンタクト空手は近年、一般の人にもできるよう、
幅広い指導法を確立しつつあります。
また、手で顔を打たないという、実戦から離れた競技ルールとなっています。

これに対して日本拳法は、現在も先鋭的に職業生活で活かすことを
前提としており、むしろフルコンタクト空手よりも格闘技的です。

日本拳法の上級者と喧嘩や決闘をやる場合、苦戦はまぬがれません。

近代格闘技の上級者であれば、互角以上に戦える可能性は十分にあります。
ですが、他の武道家が勝てる可能性はかなり低いでしょう。

もし、ノールールで日本拳法と勝負するなら、自分の得意技に加えて、
最悪、目突きと金的蹴りも考慮したほうがいいかもしれません。

ただし、そもそも目突き金的は入りにくいものです。
練習を繰り返さないとなかなか入らないことは、重々承知しておきましょう。

余談ですが、以前、あるジャーナリストに、こう相談されたことがありました。
「すごく治安の悪い場所に行くことになった。何か、相当ハードでもいいから、
 とりあえず強くなれる方法を教えてくれ。
 そんな都合がいいものが、そうそうあるとも思えないが」


迷わず私は大学の日本拳法部を紹介し、そこで半年ほど、
週に4回、練習に参加してもらうことにしました。
あと、危険地域では戦うよりも逃げろ、と言って、毎日ダッシュをするように薦めました。

彼が飛行機に乗る直前、少し手合わせをしましたが、半年前までド素人だった彼は、
見事な前蹴りと突きを繰り出せるようになっていました。

数年前、久々に再開したとき、彼は真っ黒に焼けた手で握手を求め、私にこう言いました。
「日本拳法のおかげで、カッパライもカツアゲも一撃だったよ」

残念ながら、世の中には、まだまだ暴力沙汰が無くなってはいません。
どうしても強くなる必要がある人には、日本拳法の門戸が開かれています。



【次回予告】
次回は「躰道」を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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# by neo_logic | 2008-12-23 18:41 | 世界の武術