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【世界の武術】 第2回 空手(伝統派)
【伝統派空手とはなにか】

空手は柔道と異なり、多種多様な流派があります。
それぞれの流派で、技術も哲学もまったく異なっています。

しかし、その中でも、伝統派に所属している空手道諸派は、
比較的練習法も試合法も似通っています。

基本的には、突き、蹴りが主力、投げがそれに準じる技術として
構成されています。

競技としての空手は、その技術を集約した「型」の演舞、
打撃技術で相手を倒す「組手」の二つで行うことがほとんどです。

伝統派と呼ばれる流派には、和道流、糸東流、 剛柔流、松濤館流の
四大流派があり、そのほか、それに準じる規模の団体が多く含まれています。

これらの流派は、世界空手道連盟(略称WKF)でお互いの技量を競いあうことができます。
日本の空手であれば、WKFの傘下の全空連に所属している場合が多く、
統一されたルールの元で、競い合っています。

また、各流派ごとの大会もあります。
最大流派である松濤館流は財団法人登録を行っており、
「協会系一本勝負ルール」と呼ばれる、
WKFルールとは異なるルールで大規模な大会を開いています。

日本のほか、ヨーロッパでも人気が高く、
多くの選手が活躍しています。

なお、空手は伝統派ルールの競技以外にもさまざまなルールの競技があるため、
オリンピックには採用されていません。
WKFの世界大会が、実質最高峰となっています。
これに準じるのがアジア大会とヨーロッパ大会です。



【空手の歴史】

ここでは、伝統派を含む、全ての空手の基礎となる歴史をお話します。

空手発祥の地は、沖縄です。

沖縄がまだ琉球と呼ばれていたころ、薩摩藩との約束で、
琉球王家以外の人々は、武器の使用を禁止されていました。

日本の侍たちが横暴な振る舞いをしたとき、
武器をもてない琉球の民衆は、それに対抗するべく、
船のオールや杵、脱穀のこき箸、鎌、竿、
そして素手で戦う技術を生み出したのです。

彼らは中国の武術を海洋民の文化に合わせて変化させ、
さらに薩摩の侍が得意とする示現流剣術を取り入れ、
空手の原型を作りました。それは、中国の武術と言う意味で「唐手」と呼ばれました。

琉球の唐手家は、その拳で屋根瓦を一撃で粉砕し、
鉄の棒で殴られても耐えられるよう、自らを鍛えていったのです。

日本で、この武術が広まったのは大正時代からです。
大正11年(1922年)5月、文部省主催の第一回体育展覧会において、
琉球の富名腰義珍は唐手の演武を行いました。

この時の演武は、柔道の嘉納治五郎など本土の武道家の注目を大いに引き、
一気に有名になりました。

それまで、柔術の、手首を狙う手刀技以外をほとんど知らなかった日本人にとって、
何枚も重ねた瓦や分厚い木材を一撃で粉砕する唐手は、
大きなカルチャーショックだったようです。

さらに同じ頃、関西へ遊びに来ていた琉球王家の三男、本部朝基が、
京都でボクシング対柔道の興行試合に飛び入りで参戦しました。
この朝基は、王家の人間でありながら、唐手の名手でした。

この時、朝基は52歳、相手はロシア海軍所属の、若い大柄なボクサーでした。

朝基は
「爺さん、柔道家じゃないのか。当て技は、平手で打つかグローブをつけろ」
と審判に言われ、
「俺は平手でやるよ」
と答え、のそりとリングに上がりました。

小柄な朝基は、手を高く掲げる平安四段の構えでロシア人ボクサーに対峙し、
観客はこれを見て「まるで盆踊りのようだ」と思ったそうです。

ところが、にらみ合いと軽い打ち合いの直後、
朝基は跳び上がり一閃、強烈な一撃を眉間に命中させ、
ロシア人ボクサーを失神させてしまいました。

この出来事は新聞や雑誌で大いに取り上げられ、
それまで本土では一部の武道家のみに知られていた唐手は、
一躍全国に知られるようになったと言われています。

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本部朝基

1870-1944



後年、この唐手は仏教の「空」の思想を取り入れ、
また、素手で戦う技術という意味を込めて空手と名前を変え、
日本を代表する武道の一つとなったのです。



【競技のルール】

伝統派の競技は、大きく分けて二つあります。
一つは一人で「型」を演じて、その正確さや俊敏さ、気迫などを
総合的に評価するものです。

いまひとつは「組手」です。こちらは一対一で試合を行います。
この組手について、少し詳しく説明しましょう。
ちょっとルールを知らないと、どういう競技かわかりにくいので。

基本的には、伝統派の組み手競技は、
綺麗な空手のフォームで、相手の急所へ一撃を入れたほうが勝ちです。

当て方はいわゆる「寸止め」であり、身体への接触が制限されています。

ただし、この「寸止め」というのは、直前で止めるのではなく、
軽く身体に接触させなければいけません。
そのため「寸止め」というのは正確ではなく、実際は「当て止め」というのが正しいでしょう。

ノックダウンを目的とした意図的な強打は反則ですが、
当てないわけではありません。

握りこぶしで、軽く自分の胸を叩いてみてください。
「ドン」と軽い音が聞こえるくらい。

この程度のコンタクトを綺麗なフォームで当てられれば、
伝統派では「一本」になります。

また、これはあくまでWKF競技のルールであり、
道場の稽古では、ノックダウンできるくらいいい一撃を食らわせたほうが勝ち、
としていることが多いようです。

競技でも、「協会系」の一本勝負ルールでは、
かなりの強打でもポイントになります。

なお、WKFを含む大半の伝統派空手競技では、
足を払って転ばし、上から突いてもいいとされています。
そのため、足払いは突き蹴りと並んで、伝統派空手の重要なテクニックとなっています。

これが伝統派の試合だ。





【伝統派空手の技術と選手 -全格闘技最速!-】

伝統派空手の特徴は、とにかく速さを鍛えることにあります。

ボクシングやキックボクシングとは異なり、
連打でノックアウトするのが目的ではないため、顔面をガードしたりはしません。
とにかく一撃を俊敏に当てることが重要になります。

この飛び込みの速度は、フェンシングと剣道を超えて、
全武道最速と言われています。

また、「乗りと乗せ」と言って、相手の動きを、自分に有利に働くように
誘導させる身体操作の技術も大きな特徴です。

組み手の技術に関しては、西村先生の動きが最高です。


ニコニコ動画見られる人はこちらもどうぞ。
【ニコニコ動画】空手 西村誠司先生 セミナー ハイライト

伝統派では最も過激と言われる、協会系の試合はこちらをどうぞ。


いたそー。

また、型については、ミカエル・ミロン選手がすばらしいです。


ニコニコではアジア大会ほか、世界の大会で活躍している諸岡選手の型がみられます。
【ニコニコ動画】空手 形 チャタンヤラクーシャンクー (諸岡奈緒)

伝統派空手の欠点として、蹴り技の問題があります。

ダメージの蓄積を前提としない伝統派空手は、
一発の蹴りを当てることに注力し、また、蹴りをすばやく引いて、
次の攻撃に備える必要があります。

そのため、腰を引いた状態の前蹴りが主戦力となる場合が多いのです。
この蹴りはたしかに速いのですが、威力が出ません。

キックボクシングやフルコンタクト空手などと比べると、
あまり効果的な技術ではないと言えるでしょう。

ただ一つ、内回し蹴り(カケ蹴り、裏回し蹴りとも言う)は例外で、
この技術は、伝統派空手のほうが、他の競技よりも優れています。

一方、素手で顔を殴ることが許可されている競技は、
全ての格闘技の中でも、伝統派空手以外にはほとんどありません。

そして、この技術に関しては、伝統派空手は群を抜いています。
「最速の上段突き」を活かしてボクシングに転向し、
大きな成果を出している伝統派空手家もいます。

伝統派空手は、駆け引き、突き技、足払いに特化した打撃格闘技と言えるでしょう。



【伝統派空手を習いたい】

学校や会社の部活・サークルで、空手部があるところは限定されています。
大きな大学ならたいていありますが、大学生でない場合、
基本的には、町の道場を探すのがいいでしょう。

電話帳を開いて調べてみると、かなりあります。
比較的小さな市町村でも、一つくらいは見つかるでしょう。

市民体育館で指導している人や、ダンスホールなどを借りて
道場としている人も結構います。
必要なものは、空手着のほかに、防具がいることがあります。
拳や足を保護するサポーターと、顔につける面(メンホーという)などです。

あと、指導者がちゃんとしていないと、怪我の可能性が結構たかいです。
軽く当てるというのがルールですが、
実際には伝統派空手は「軽く当てる」というより「軽く当てるはず」の空手となっています。

そして、軽く当てるはずの打撃が強く当たってしまうことがある。
技術的にも防御を前提としていないし、あまり受身も練習しないので、
強く当たってしまうと脳震盪を起こしたり、倒れて床に頭を打ったりします。

ハードな競技なので、そういうのが好きな人ならいいのですが、
そうで無い場合は、指導者が怪我に配慮しているか、見学のときに見ておきましょう。
ちゃんとした先生に指導を受ければ、安全に実力をつけることができるでしょう。



【伝統派空手で戦う。伝統派空手と戦う】

ここからは個人的な意見です。

伝統派空手は決闘や喧嘩で、どのように戦うでしょうか?
今回も、以下のような架空の人間を想定します。

・男性
・25歳
・身長170センチメートル
・体重70キロ。
・コンディション良好。
・既往症なし。
・喧嘩や決闘を前提として行動できる思考を持っている。
・精神状態は平静で安定している。

一人は伝統派空手経験十年のA。段位は二段。流派の地方大会で入賞している。
一人は柔道経験十年のB。段位は二段。市民大会で入賞している。
一人は武道経験の無いC。スポーツの経験は豊富で、ケンカが得意。

この3人が、街の中で勝負することになったとします。

まず、AとBが戦う場合。

かつては「柔道よりも空手のほうが速いから強い」
という通説がありました。

しかし実際には一発、二発当てただけで、人間はそう簡単に崩れません。
特に、Bが「顔にパンチを食らっても決して下がらず、とにかくつかんで投げる」
という覚悟が決まっていると厄介です。

この場合、Aは競技とは違う戦法で、ヒット&アウェイを繰り返すのがいいでしょう。
重心が安定しているBに足払いをかけるのは難しいでしょうから、
ひたすら顔を狙って突きを当て、倒れるまで繰り返すのが効果的だと思われます。

また、Cと戦う場合、Aは、自分の技術の限定性を理解する必要があります。
ケンカが得意なCは、額でパンチを受け、つかんで殴るなど、
空手では反則となる打撃を使うかもしれません。
また、膝頭を蹴ったり、胸ぐらをつかんだ頭突き、膝蹴りなどを使うかもしれません。

Aはやはり、ヒット&アウェイを繰り返すのがいいでしょう。
Cが顎をがっちり引いて両手でガードをしている場合、
喉や胸の中央の骨を狙ったほうが効果的かもしれません。

また、足払いがかかる可能性はかなり高そうです。
足払いと突きの繰り返しで、Aが勝てる確率はぐっと上がるでしょう。

相手がBにしろCにしろ、Aは組み付かれないよう注意する必要があります。
組まれたら、とにかく顎を狙って繰り返し殴るしかないでしょう。

また、名前から考えるとちょっと逆説的ですが、
伝統派空手の速度は、武器に活かせます。

なにしろ伝統派は素早さを鍛えるので、刃物でも持てば圧倒的に有利です。
A,B,Cの全員が刃物を持っていた場合、まず間違いなくAの圧勝と思われます。

余談ですが、各国の軍隊は、ナイフ・ファイティングの基本として
フェンシングを応用した技術を学びます。

しかしフェンシングは、あたりさえすればいい、という競技です。
体の中央めがけて一瞬で飛び込む伝統派に比べて、殺傷効果が薄そうです。

戦場で相手を殺すことが目的である場合は、
ナイフを使った戦いには、伝統派空手を取り入れるといいかもしれません。



【おまけ】
2007年モントリオール映画祭に出品された「黒帯」は、
主演の二人が伝統派空手の大家という、珍しい映画です。

興味のある人は見てみてください。





【次回予告】
次回は、空手(フルコンタクト空手)を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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by neo_logic | 2008-11-30 00:01 | 世界の武術
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