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【世界の武術】 第3回 空手(フルコンタクト)
前置き・・・

世界の、と言っておきながら、日本ばっかり出てきますが、
とりあえず10回くらいまでは日本の武道を取り上げることになるかと思います。
ご容赦くださいませ。



【フルコンタクト空手とはなにか】

フルコンタクト空手とは、主に突き蹴りによって構成される武道です。
打撃技術が主体となっている点は、伝統派空手と同様ですが、
その競技ルールや格闘技術は、伝統派空手とはかなり異なっています。

競技としてのフルコンタクト空手は、1対1で、
お互いに素面、素手、素足で全力で突き、蹴りを当て合い、
どちらか一方が倒れるまで戦うルール(直接打撃制)を採用しています
(防具を使うこともあります)。

同種の競技は、戦前から琉球や日本、アメリカ、韓国にもあったものの、
一般的にフルコンタクト空手という場合は、昭和40年前後から急速に発達した、
大山倍達を創始者とする「極真会館」の試合ルールをベースとしています。

フルコンタクト空手は流派という概念を持たず、
その技術もフルコンタクトルールに合わせて発達してきました。
そのため、伝統的な型をあまり重視しません。
現在は、日本を始め、ブラジルやオセアニアなどで、多くの選手が活躍しています。

大会はそれぞれの組織ごとに開かれており、統一された大会はありません。
しかし多くの大会はオープン参加を認めており、
さまざまな道場の門下生が、相互の大会に参加し、実力を競い合っています。



【フルコンタクト空手の歴史】

戦前に日本へ伝わった空手は、組手稽古の実施に慎重で、
試行錯誤の後に、剣道のルールを基に「当て止め」ルールを確立しました。

しかし、実際の道場稽古は全力で殴りあうことがほとんどだったため、
それをルール化したいと考える空手家も多くいました。

特に、剛柔流は伝統派の中でも接近してからの乱戦に強く、
松涛館流の、すり足で間合いを計り、隙をついて一撃の大技を繰り出す組手とは
大きく異なった技術を持っていました。

戦後、剛柔流正派は、
型に接近戦技術を残し、組手は全空連に近い方式を採用しましたが、
一方で、剛柔流の山口剛玄門下である大山倍達は、
全力で打撃をぶつけ合う直接打撃制ルールを模索していました。

大山倍達は、空手家の中でもタフネスに長けていたと言われています。
また、極めて握力が強い人物で、握力で硬貨を曲げることができたそうです。

大山は昭和30年に剛柔流から独立して大山道場を立ち上げ、
さらに昭和39年には極真会館を発足。

昭和44年には念願のフルコンタクトルールで大会を開き、
これはメディア戦略が功を奏したこともあり、大きな人気を得ました。

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手刀でレンガを割る大山倍達


極真会館からは、その後新たなルールを模索する門下生たちによって、
さまざまな分派が生まれました。

その中で、正道会館を立ち上げた石井和義氏は、
フルコンタクト空手の人気を活かし、キックボクシングとの融合を目指して
「K-1」を開催しました。

「K-1」は現在も年末のテレビで放映され、人気を博していますが、
その背景として、フルコンタクト空手は大きな影響を与えていたのです。



【競技のルール】

フルコンタクト空手のルールは、
大会を開催している組織ごとに若干ながら異なっています。

そのため、ここではそのベースとなった、
平成元年ころの極真会館世界大会で採用されていたルールを紹介しましょう。

このルールでは、競技者は素面、素手、素足を用いて
突きと蹴りの打ち合いのみで勝負することとなっています。
金的、背中への攻撃、掴むこと、および手による顔への攻撃は禁止されています。

3分の試合時間中にダメージを与え、相手がすぐに立ち上がれなかった場合、
「一本」となり勝敗が決定します。それに準じる「技あり」は2つ取れば一本となります。

決着がつかなかった場合は判定になり、
判定で決着がつかない場合、2分の延長戦が行われます。

これが極真の試合だ。


また、フルコンタクト空手では、普通の大会とは別に、昇段審査などで、
一人の人間が次々に別の相手と対戦する「連続組手」という稽古があります。
昇段の要件が10人組手となっている場合も多く、達成するのはかなり困難です。

このため、フルコンタクト空手の有名流派で初段を取るには、
他流派の二段相当の稽古が必要となる場合があります。

極真会館の「100人組手」は、あらゆる武道、武術の中でも
最も過酷な荒行と言われ、これを達成した選手は10人もいません。



【フルコンタクト空手の技術と選手 -恐るべきローキック-】

フルコンタクト空手では、ノックアウトのために、累積的なダメージを与える必要があります。
そのため、上手に当てるための駆け引きよりも、
前に進む力(これを「当たり強さ」と言います)が重要な要素になります。

この力をベースに突きと蹴りを絶え間なく繰り出し、
チャンスがあれば、ハイキックなどの大技につなげます。

当然、相手も同じ戦術を使ってきますので、
少々打たれても倒れないため、打撃に対する抵抗力
(これを「打たれ強さ」と言います)をつけていきます。

かつてのフルコンタクト空手では、この二つの要素が
判定の材料にもなっていました(前に出ていた方が勝ちとなる)。
この過酷な試合は、スポーツとしてはあまり受け入れられず、
「押しあい空手」「ガマン大会」と揶揄されることが多かったようです。

しかし現在では、当てる技術とその威力を重視する判定方法をとる場合が多く、
ヒット&アウェイを利用した戦術も発達して来ています。

ヒット&アウェイを得意とする、ギャリー・オニール選手


フルコンタクト空手の看板技は、相手の太もも、ないしふくらはぎを
自らの脛で蹴る「下段回し蹴り(ローキック)」です。
フルコンタクト空手の選手は、例外なくこのローキックに特化した練習をしています。

技術自体を習得するのは比較的容易で、
しかも極めて地味な技ですが、効果は抜群です。

フルコンタクト空手のローキックは、以下の動画がわかりやすいと思います。
数分間の試合の中で、足を蹴って徐々にダメージを与え、ノックダウンしています。


「フルコンタクト空手は、どちらが勝っているのかイマイチわからない」
と言われることがありますが、両選手の足に蓄積されたダメージを見ることで、
ぐっと競技を理解しやすくなるでしょう。


フルコンタクト空手の欠点としては、
手による顔への打撃が無いという、ルール上の問題があります。

このルールのため、蹴りの技術は大きく発達したのですが、
ノックダウン制の競技でありながら、顔をあまり防御しないという、
近代格闘技としては特殊なスタイルが普通となっています。

また、突きの技術それ自体が、効かせるというよりも
相手の動きを制止させて、蹴りにつなげるためのものなので、
他の打撃格闘技に比べると、あまり優れているとはいえません。

フルコンタクト空手の長所は、圧力とタフネス、そして
ローキックを始めとする蹴りの技術にあると言えるでしょう。

フルコンタクト空手の選手として、現在、極真空手松井派の館長である
松井章圭を取り上げます。以下の動画をどうぞ。
注:この動画では普通のルールと異なり、転ばし下段突きが認められるものを含んでいます。

百人組手の様子が見られます。50人以降の松井さんの表情、こええ・・・



【フルコンタクト空手を習いたい】

フルコンタクト空手は、学校や会社の活動となっていることはほとんどありません。
習いたい場合は、インターネットや電話帳で道場を探してみましょう。
市民体育館やスポーツジムがある市町村であれば、習える可能性はかなりあります。

必要なものは、空手着のほかに、防具がいります。
素面、素手、素足でやるのは上級者の大会のみで、
普段の稽古や新人戦では、拳や足を保護するサポーターを使うためです。

フルコンタクト空手はある程度の体格を要求します。
筋力トレーニングと縁がなかった人は、
腕立てや腹筋をやって、体を鍛えておきましょう。

打ち身は前提なので、そのつもりで入会しましょう。
さすがに骨折するまで稽古する道場は、今はほとんどありませんが、
常に足や胸にアザができることは覚悟しなければなりません。

なお、フルコンタクト空手の武術要素と異なる問題点として、
意外とお金がかかるという点があります。

これは、学校や財団から給料が出ないため、
たいていは道場主の個人経営となっているためです。
入会に1万、道着と防具に1万、月謝に1万、
三ヶ月に一回の審査に1万、三ヶ月に一回の試合に1万とかかる場合もあります。

道場によっては、指導がしっかりしていない上、お金だけかかる事になりかねません。
できれば評判を聞いておくといいでしょう。
極真会館や正道会館の大道場であれば、まず大丈夫だと思います
(極真会館は、現在多くの派に分かれています)。

なお、女子の場合は、そもそも打撃に使う筋肉の量を増やすのが難しいため、
打撃による怪我は、男子よりも比較的少なく抑えられます。
それでも、ある程度の打ち身はするものだと思っていたほうがいいでしょう。



【フルコンタクト空手で戦う。フルコンタクト空手と戦う】

ここからは個人的な意見です。

フルコンタクト空手は決闘や喧嘩で、どのように戦うでしょうか?
今回は仮想対決ではなく、フルコンタクト空手の特性を意識して、私見を述べます。

フルコンタクト空手は、他の武道・武術と比べて、フィジカル(体力)を重視します。
未知の相手に対して、フィジカルで優れているというのは圧倒的に有利です。

フルコンタクト空手の人間が実際の喧嘩・決闘で戦う場合には、
このフィジカルを活かした戦法を取るべきです。

試合とは異なるので、上段をガードし、金的を守るためにやや半身を切る必要はありますが、
基本的には速攻で試合を決めるときと一緒で、一気呵成に攻め落とすべきです。

試合でよくある、間違って上段を突いてしまうことは、
まったく心配しなくてもかまいません。
高めの突きを繰り出せる分、むしろ試合よりも楽かもしれません。

ペース配分も考えず、最初から全力で突っ込み、
相手が何もできないうちにしとめてしまうべきでしょう。

言い方をかえれば、上段と金的のガードさえ意識すれば、
フルコンタクト空手は多様な相手に対応できるということです。

では、フルコンタクト空手の選手を相手にする場合はどうするべきか。

多くの武道・武術はフルコンタクト空手ほどフィジカルを鍛えず、
どちらかというとテクニックやスピード、タイミングを重視しているでしょう。
それ以外のスポーツでも、タフネスを鍛えることはほとんど無いはずです。

これに対して、フルコンタクト空手の上級者が繰り出す、突きとローキックの連打は、
実際に対峙してみるとわかりますが、強烈な圧力があります。

このため、秘伝の奥義も綿密な作戦もむなしく画餅と化し、
体力と威力で一方的に圧倒されてしまう可能性もあります。

このような負け方をすると、外傷や痛みなどの後遺症よりも、
むしろ精神的にショックを受けてしまうことがあります。
自分の努力が無駄だったような気がしてしまうからです。

フルコンタクト空手を相手するには、自分の持ち味を理解し、
あまり凝った事を考えず、ひたすら得意技をぶつけるのがいいでしょう。
特に、上段突きと投げ技、寝技がある競技であれば、迷わずそれを使うべきです。

たとえば柔道であれば、組手争いなどせず、まっすぐに突っ込んで組み合い、
即座に投げと寝技へ移行することで勝つことができるでしょう。

伝統派空手の場合は、顔の中央を狙い、当てたら素早く引くことで対応できるでしょう。
上手に誘導できれば、遠間から一方的に打ち勝てる可能性もあります。

フルコンタクト空手を相手にするときは、とにかく自分の領域に巻き込むことが重要です。
ためらったり迷ったりしていると、怒涛の連打を食らい、
あっさりトドメを刺されてしまうでしょう。



【次回予告】
次回は空手(その他)を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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by neo_logic | 2008-12-03 23:45 | 世界の武術
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