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【世界の武術】 第5回 合気道
【合気道とは何か】

合気道とは、相手の攻撃を受け流したり、攻撃の威力を利用して反撃する技術を
体系化、組織化した武道です。

多くの合気道は、身体を利用した円運動によって相手の攻撃を無力化し、
同時に死角を取って制圧する方法を指導しています。

競技としての合気道は限定されています。
特に、1対1で勝負する形式の稽古や試合は、めったに開かれていません。

多くの流派で行われている競技は、攻撃側の「受け」と、反撃側の「取り」に別れて、
技術の披露を行い、正確性や実戦性などを評価するという形式になっています。

合気道の演武

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日本の警察では、逮捕術として合気道を取り入れています。
男性の場合は柔道や剣道を選ぶことが多いようですが、
女性警察官の多くは、合気道を学びます。

日本のほか、ヨーロッパ、南北アメリカ、東南アジアなどでも人気で、
多くの合気道家が、日本の精神性と精妙な技術を習得するために汗を流しています。

統合組織である国際合気道連盟(IAF)は、1984年に国際競技団体総連合(GAISF)の正式会員となっています。そして、1989年から、オリンピックを補完する競技大会であるワールドゲームズ大会に毎回参加しています。



【合気道の歴史】

合気道は柔道と同様、古流柔術から派生した武道です。
歴史が長いため、最初に技術を作ったのが誰かは、よくわかっていません。

しかし技術的な体系を確立させたのは、
大東流柔術の中興の祖とも呼ばれた、武田惣角であると言われています。

武田惣角
安政6年(1859年) - 昭和18年(1943年)

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武田の二つ名は「会津の小天狗」。東北生まれで全国を放浪して技術を教授し、
その腕前から「近代最強の武道家」と呼ばれています。
柔道家、空手家、山賊、博徒との戦いは、多くの講談や小説になりました。

その後、大東流は合気柔術と名乗り、現在も東北以北を中心に、
多くの道場が開かれています。

武田よりも有名なのが、その弟子であり、
「合気道」という名前を最初に使い、「この手、千人力」と呼ばれた植芝盛平です。

植芝は軍人に合気道を教授し一躍その実戦性が認められ、
国内外を問わず、多くの分野で認められるようになりました。

非常に集中力が高く敏感な人物、また、
相手との間の取り方が絶妙な人物であったといわれています。

全盛期には、相手の動きが止まっているように見え、
どんな立会いも怖いと思えなかった、と語っています。

植芝盛平の模範演武


植芝は戦後、合気会を組織しました。
合気会は現在、合気道の最大組織となっています。

この植芝門下に、後に養神会を開いた塩田剛三がいます。
上の動画の最後で解説をしている方です。

塩田剛三は植芝以降、最大の合気道家であり、
現在でもその実力を評価されています。

特に有名なのは、昭和32年、アメリカの上院議員、
ロバート・ケネディ夫妻の前で行った演武です。

上述のような指導内容を見て「こんな技術が実際に使えるわけがない」と思った
ケネディは、同行していたボディーガードに命じ、塩田と手合せをさせました。
ところが一瞬で、ボディガードの体は畳の上に取り押さえられてしまいました。

この事実はテレビ放映もされたため、合気道の実力は広く知れ渡るようになりました。
以下はバラエティ番組で紹介された塩田の合気道です。



植芝系の合気道は、現在世界中に広まっています。
分派もいくつかあり、上述した「養神館」以外では、「心身統一合氣道(氣の研究会)」が、植芝系から派生し、広く普及している合気道です。
大学の部活などでは、心身統一合氣道が多いようです。

合気道は、その技術の華麗さから、フィクションの題材としても、
空手や柔道と同様に、頻繁に取り上げられます。

秋田書店のマンガ「グラップラー刃牙」では、
塩田をモチーフにしたキャラクターが活躍しています。

また、俳優のスティーブン・セガールなどによって、
カンフーと共に、アクション映像としての評価も受けています。

セガールの合気道


かっこいいなぁ。



【合気道の技術 -魔術か手品か-】

上述の映像を見てもわかるとおりですが、
普段、我々が目にする合気道は、とても華やかです。

小柄な女性や老人が大男を投げ飛ばし、
怪我一つなく倒せるというのは魅力的です。

しかし、実際に強靭な大男を相手にして、
このような技術がやすやすとかかるものか、
という不信感も同時に受けることが多いようです。

これに対して端的に結論を言いましょう。
合気道の技術は、実際の打ち合いにおいて有効です。
ただし、相手の体格や運動能力が優れている場合、かけるのが困難ではあります。
それと、実際には、あんなに派手に使えるものではありません。


合気道の稽古をするためには、技を受ける相手も上手に受身を取る必要があります。
その受身が、あのような派手な投げられ方になるのです。
映像で見られる合気道は、その稽古の再現に過ぎません。

したがって、暴漢が合気道家の胸倉をつかんでも、
鮮やかに宙を一回転して無力化されるという事はないでしょう。
地味に手首が折られるだけで。

また、相手の力を逆に利用するのが合気道だ、
というのもよく言われる話です。
なにやら深遠な言葉のようですが、この理屈自体は簡単です。

徒競走をやっている人の足元にピアノ線を張っておけば、勢いよく転ぶでしょう。

同じように、全力で突きこんでくる空手家に対して、
体をかがめて足元に滑り込めば、派手に吹っ飛んでいくでしょう。
つまり合気道には、相手の自爆を誘うような方法論がある、ということです。

もっといえば、「引っ掛け技」がかかる確率を、
できるだけ上げるよう、工夫してあるのが合気道なのです。

合気道はしばしば、「出来レース」「インチキ」「理屈倒れ」のように言われますが、
それは、個別の未熟な合気道家が原因です。

合気道を使いこなせる上級者の中は、
柔道家や空手家と伍して戦える人がたくさんいます。

合気道の道場では、相手の突きやつかみなどの攻撃行為に対して、
円運動を活かした「かわす」「関節をひねる」「投げる」という技術を練習します
(うまくかからない場合は、補佐的に打撃技を使うことがあります)。

この技術を集約した一連の動作を繰り返し練習し、体に染み込ませていくのです。

合気道は魔術でも手品でもなく、武道的な精神性を伴う戦闘の技術です。
それ以上でもそれ以下でもありません。



【合気道を習いたい】

大学生に人気が高いので、かなりの数の大学には合気道部があります。
大学生でない場合、個人道場で稽古するのがいいでしょう。

空手よりやや普及率は下回りますが、それでも相当の道場数があります。
特に関東圏で盛んです。東北以北は大東流の道場を探してもいいでしょう。

大東流合気柔術は、合気道に通じる技術が含まれています。

逆に中部以西の場合は、古流柔術が同じくらい盛んなので、
合気道と競合している場合もあります。
両者は似て非なるものなので、入会する際は注意が必要です。

入会費、月謝、道着代はほとんど空手と同額です。
年に何度か審査がありますので、これ以外に審査代が必要です。

なお、合気道はもともと大東流が殿中武芸であった影響で、
袴を着用することがあります。ヒザの動きを読まれにくい利点がありますが、
普段の護身には、あまり意味がありません。

着用は任意としているところが多いので、最初から袴を買う必要はありません。
意外と高額です(1万~2万)。

武道の中でも、合気道は怪我に対して高い配慮が払われています。
また、初心の段階から、筋力を要求されることはほとんどありません。

そのため、年齢や性別、素養をあまり意識せずに始められる武道でもあります。

「健康のためや身体操作の技術を学ぶために、なにか日本武道を始めたいな」
という動機があるのなら、合気道はとてもいい選択だと思います。
技術の意味を正しく理解して習得していけば、護身にも役立つでしょう。

一方、普段の稽古では技術習得が中心となりますので、
とにかく強くなりたい、という強烈な動機がある場合はおすすめできません。

合気道を通じて強い武道家になるためには、道場の稽古のほかに、
筋力トレーニング、ランニング、アタックトレーニング、スパーリングなどを、
個人的に練習しておいたほうがいいでしょう。
百発百中で合気道の技術を使えるとも限らないからです。

ただし、合気道でも一部に例外があります。
あまり広く普及している流派ではないものの、以下の流派では、
合気道の技術を競技化して、試合形式で技を掛け合う稽古を認めています。

日本合気道協会(富木流の正式名称)
合気道S.A.
フルコンタクト合気道覇天会


日本合気道協会は、短刀を模した短い棒を持った相手を取り押さえる競技で、
合気道の技術をそのまま実戦形式で評価するものです。
この流派では、柔道の技術から合気道を解釈しているという、珍しい特徴があります。

合気道S.A.と覇天会は、合気道の技術にフルコンタクト空手を加えて
競技化したような試合を開いています。
S.A.の大会はオープン制で、合気道の技術を活かして他流と戦うことができます。

これらの流派で稽古を積んでいれば、体力の向上や対人練習も
道場稽古の中で行うことができます。

合気道をやりたい、強くもなりたい! という方は、
これらの道場が近くに無いか、探してみましょう。

覇天会の試合


余談ですが、私は以前、覇天会の代表と軽くスパーリングをやったことがあります。
空手や柔道にはない独特の投げ技を受けて、驚愕したものです。



【合気道で戦う・合気道と戦う】

ここから先は個人的な意見です。

合気道は決闘や喧嘩などで、どう戦うでしょうか。

合気道の本質からすると、自分から積極的に合気道の技術をかけにいく、
ということはありえないでしょう。合気道は反撃に特化した技術だからです
(個別の合気道家が、自分の判断で攻撃することはあるでしょうが、
ここでは合気道の技術のみを使うとして、という話をしています)。

では、柔道や空手の技に対して、合気道の反撃は絶対に有効なのか。

これについてですが、合気道家は個人に実力差がありすぎて、
多々ある武道の中でも、最も一般論が言いにくいところです。

ただ、道場稽古を繰り返してどんなに高段位になったとしても、
それだけで実戦の実力者だとは言いきれない、と思います。

空手や柔道の場合、黒帯だ、何段だ、というのが、
ある程度は、強さのバロメーターになります。

これに対して、合気道は何段であろうが、強さとの関係がほとんどありません。

もちろん、技術を習得する過程で、運動することにはなるのですが、
本格的な体力トレーニングや対人格闘練習はほとんどやらないからです。
この点が、柔道や空手と大きく異なるところです。

というわけで、「うまくかかれば有効だ」と言うしかありません。

動体視力が良く、また集中力がある合気道家なら、
柔道や空手の技をとらえて制圧することもできるでしょう。

強いか弱いか、と言われると、日本刀や銃などの武器と同じで、
「ちゃんと使えれば強い」ということです。



【補足:合気道の意義】

個人的に、合気道が持つ最大の価値は、
相手に怪我をさせる確率が低いという点だと思います。

実際にあった話ですが、深夜の繁華街で女性と男性がもつれあっていて、
暴漢だと判断した空手家が、女性を守るために必殺上段回し蹴りを命中させ、
男性が死亡したという事件があります。

ところが、この男性は実は女性の知り合いで、
酔っ払っていたところを介抱していただけだったのです。

これは「勘違い騎士道事件」というむずかしい裁判の例として知られ、
今でも法律の判例集などによく取り上げられます。

このような場合、合気道であれば、心配することはありません。

もともと、自分から打ち込んだり投げたりすることは、本義では無いわけですし、
万が一、本当の暴漢であっても、大きな怪我をさせることなく、
制圧することができるでしょう。

日本武道の特徴として「自分も相手も怪我をせず、相手を倒せる」事を
重視するという点があります。合気道は、特にこの観点を重視しています。

この思想は、防犯や警備を行う上で重要です。
各国の警察官や警備員などが、訓練に合気道を取り入れているのは、
こういった長所があるからでしょう。



【次回予告】
次回は少林寺拳法を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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by neo_logic | 2008-12-13 18:31 | 世界の武術
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