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【世界の武術】 第6回 少林寺拳法
大規模な武道の紹介も終わりましたので、
今回からはより小規模な武道を紹介していきます。
縮小バージョンになりますが、変わらないご愛読をお願いします。


【少林寺拳法とは何か】

少林寺拳法は、護身術です。
その体系の中には突き、蹴り、投げ、関節技など、多くの技術が含まれますが、
「柔法」と呼ばれる、手首を極める関節技が看板技となっています。

かつては競技として、「運用法」の対人稽古を行っていましたが、事故が多く、
現在では組織だったトーナメントなどは行われていません。個別の道院
(少林寺拳法では、道場のことを道院と言います)や大学では、
慎重な指導のもとで、行うところもあるようです。

少林寺拳法の関節技
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道着の上から、法衣と呼ばれる仏門の服を着用することがあります。

少林寺拳法の特徴として、宗教法人登録を行っており、
宗教と密接につながっているというところがあります。

教義としては禅宗に近く、健康増進・精神修養・護身練胆の三徳を兼備し、
人々が平和で幸福な理想社会を実現する為の力を獲得するのが目的です。
どちらかというと宗教と言うよりも、社会教育団体に近いかもしれません。

かつては少年部の活動が非常に盛んでした。
2006年のデータでも14万人の現役拳士(門下生)がいるとあります。
海外にも普及しており、31ヶ国に道院があります。

非常に良く間違われますが、
中国の少林拳と、日本の少林寺拳法とは異なる武術です。
沖縄小林流空手道は空手で、少林寺拳法とは違います。
日本拳法と少林寺拳法も、全く異なる武術です。

また、金剛禅少林寺拳法と不動禅少林寺拳法がありますが、
本項で取り上げるのは、金剛禅少林寺拳法です。




【少林寺拳法の歴史】

少林寺拳法は、開祖である宗道臣が一代で作り上げた武道です。

宗道臣
1911年 - 1980年
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宗は戦前から戦中にかけ、中国(当時は満州)で特務機関の活動をしている際に、
各種の中国拳法を学びました。

敵国である日本人に中国人が武術を教えたというのは、
一見して奇妙に思えるかもしれません。

ところが、中国の達人たちは、宗に喜んで指導をしました。
当時の中国では武術訓練が規制されていたため、
弟子はおろか跡継ぎすらいない武術家も多かったからです。

これは中国有数の内乱である「義和団事件」の影響です。

銃や砲で武装した欧米の軍隊や政府の軍隊に対して、
中国の武術家たちは、義和拳という武術を使い、
素手や剣で頑強に戦い政府に恐れられ、活動を禁止されていたのです。

このため、当時の中国には実戦経験が豊富な武術家たちが各地に眠っていました。
宗は、この人たちから一心不乱に技術を学びました。

そして帰国後、宗は学んできた武術に日本の柔術を加味し、
少林寺拳法の技術体系を作り上げました。

焼け野原となった日本の青少年たちのため、
少林寺拳法は大きな志と共に発足したのです。



【少林寺拳法の技術 -千変万化の立ち間接-】

少林寺の看板技は、上述したとおり、立ち関節技、
特に手首や胸倉をつかまれた時の返し技です。

これらの技術は、見た目は合気道にも似ています。
ですが、合気道の場合は、「合気」という根本理念を中心に、
全ての技術が作られています。

これに対して、少林寺拳法の場合は、個別の技術が大量にあり、
それぞれに理屈があります。

そして、それぞれの技術は極めて具体的かつシンプルであるため、
比較的短期間で多くを身につけることができます。

拳士(少林寺拳法家)は、これら個別の技術を打ち合い、間接、止め、という、
一連の動作によって構成できるように指導されます。

熟達した少林寺拳法の動きは非常に流麗です。
大会などに行くと、目を疑うような早業を見ることができます。

特に、打撃から立ち間接への移行は、他のどの格闘技よりも俊敏でしょう。

少林寺拳法の演武


少林寺拳法の打撃技術は、他の格闘技とやや異なっています。
パンチやキックを使うところは、一見して同じなのですが、
他の競技格闘技に比べると、比較的腰を引いて、
速度を上げることを主眼においています。

ただし、伝統派空手のように引き足をとるわけではなく、
腰の力を使って打つ方法を指導しているようです。

目や金的といった、普通の競技では反則となるような
部位を狙うことを想定しているからです。
このような急所を狙うときには、大きな動作を減らし、無造作に打つ必要があります。

それ以外の打撃についても、ノックダウンを狙うだけではなく、
投げや関節技と組み合わせやすくできています。

打ち勝てるならそのまま打ち切ってしまう。
打撃で圧倒できないなら、素早く当てることで相手の攻撃を誘発し、
「このやろう、こっちもぶん殴ってやる」と、大きく打ち込んできたところを捕らえ、
関節を極めて制圧する、というのが少林寺拳法の典型的なパターンです。

つまり、格闘競技的な武道と比べて、打撃に対する思想が根本的に異なるのです。



【少林寺拳法を習いたい】

少林寺拳法は、学校の部活か、道院で学ぶことになります。
普及率は高くありませんが、地方にもあります。
本山が香川県にあるので、四国には比較的多いようです。

会費(月謝のこと)は、市民体育館の武道講座よりは高額ですが、
個人経営の空手や合気道に比べると、いくぶん安いほうです。

少林寺拳法には、運営する職員のみに給与が支払われ、
プロの選手や指導員がいないからです。これは組織の方針です。

入門する場合、少林寺拳法は宗教としての側面を持つので、
理念に対して敬意を払いましょう。
高額なお布施は必要ないし、奇妙な戒律もないので、それで十分です。

怪我には高い配慮が払われています。
また、老若男女をほとんど問いません。
少年部の活動は現在でも活発で、また、二代目の道主(館長)が
女性であるため、最近は女性の入門者が増えているようです。

障害者にも可能な数少ない武道であり、片腕の高段者もいます。

片腕で錫杖を扱う上田清


少林寺拳法を習うのに向いている人は、ずばり、「普通の人」です。

多くの武道には、「格闘要素」と「護身要素」が一緒に含まれていますが、
少林寺拳法はその中でも「護身要素」が強い武道です。

日本で普通に平穏な生活を過ごしたい、
でも、ちょっとだけ強くなっておきたいな、と思っているなら、
少林寺拳法に入門する事を考えてみるのは、いい選択だと思います。

ただし、護身と一言で言いますが、銃で狙われたときや、
暴動や戦争から逃げ延びるのに役に立つ、という意味ではありません。

あくまで、ちょっとしたいざこざで、役に立つことがあるかもしれない、
という意識で習ったほうがいいでしょう。
あらゆる状況を想定した「護身」は、時に決闘や喧嘩よりも難しいものです。

なお、一部ではありますが、少林寺拳法の門下にも、
高段者や大学の体育会主将などには、
競技的なルールでも、他の格闘技と渡り合える拳士(門下生)がいます。

どうしても少林寺で強くなりたいという場合は、
こういった人に個人指導を受け、上を目指していきましょう。



【少林寺拳法で戦う・少林寺拳法と戦う】

ここから先は個人的な意見です。

少林寺拳法は実戦でも有効でしょうか?


これは難しい問題です。
少林寺拳法は誰にでもできるし、すぐにたくさんの技術を身につけられるので、
喧嘩や格闘技などやったことがない全くの素人と比べれば、あっという間に強くなれます。

ただし、空手や柔道の猛者、あるいはキックボクシング、総合格闘技と
戦って勝てるかというと、どんなルールであれ、試合で勝つためには、
それ専用の練習をやらなければ難しいと思います。

少林寺拳法の技術をそのまま試合で使おうとしても、
試合の場合、目打ち、金的打ちは真っ先に反則扱いになるでしょうし、
衝突する力が弱いので、当たり負ける可能性が高そうです。

決闘や喧嘩のように、最初から全力でぶん殴りあうのが前提の場合も、
それなりに対処はできるでしょうが、かなり苦戦しそうです。
技術がうまくかからない場合、体力で圧倒されることもあるからです。

しかし、「じゃあ少林寺拳法は弱い」と言えるのでしょうか。

現実的に「身を守る」ということを考えた場合、
胸倉をつかまれたり、腕をつかまれたときの対処が、
個別の方法論によって確立されているというのは、大きな長所です。


私が学生時代、あるイベントの列に並んで、陣取りをしていたときの事です。
荒っぽい人がいて「おい、場所よこせよ!」と、ガラの悪い態度で
痩せたメガネの青年の胸倉をつかんできたことがありました。

ところが、ひょろっとした小柄なメガネ君は、
その腕を両手で取り、くるりと大柄な男をひっくり返してしまいました。


「イテテテテ」と言って、大男はその場を立ち去りました。

多分少林寺だな、と思い、流派を聞いたところ、
やはり大学の少林寺拳法部の二段でした。

少林寺拳法が最も役に立つのは、こういった場面や、
居酒屋とか電車で酔っ払いに絡まれたりしたときでしょう。
あるいはホストに強引に誘われたときとか。

そして、日常生活をすごす上では、それで十分です。
地上最強を目指すだけが、武道の命題ではありません。



【次回予告】
次回は日本拳法を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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by neo_logic | 2008-12-21 01:20 | 世界の武術
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