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【世界の武術】 第7回 日本拳法
前回さっぱりコメントがつかなかったので、さっさと次に行きます。
少林寺にはあまりなじみが無い人が多いのかね。
全然関係ないけど、やざきさんお元気ですか?


【日本拳法とは何か】

日本拳法は、柔道から派生した武道です。
空手や相撲の影響も受けています。

競技のルールは、
防具(面・胴・股当その他)とグローブを着けて、突き、蹴り、関節技を駆使して
勝敗を争います。総合格闘技に近い側面を持っています。

日本拳法の防具は剣道の防具をもとに考案されており、特に面が剣道そっくりです。
知らない人が見ると、竹刀を忘れた剣道かと勘違いすることがよくあります。

中央大学に在学していた知人に日本拳法家がいるのですが、
彼と話していたときに、
「友達に試合の写真を見せたら、『これ、なんの冗談だ?』と言われたよ」
と言って笑っていたことがありました。

日本拳法の試合
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ルールは防具の上から全力で打ち合う直接打撃制です。
道場の稽古では防具を使わない場合もあります。

日本拳法は自衛隊の徒手格闘の大会ルールとほとんど一致しています。
警察の逮捕術、警備員の護身術にも大きな影響を与えています。

また、実戦志向で有名な大道塾空道の大会において、
他流派では総合格闘技以外の選手がほとんど活躍できていない中、
唯一、日本拳法の選手だけは上位に食い込んできています。

日本以外にはほとんど普及していませんが、
日本拳法の上位選手には、総合格闘技、キックボクシング、ボクシングなどに
転向して大きな成果を出している選手も多く、今後も活躍が期待されます。



【日本拳法の歴史】

日本拳法は、1932年(昭和7年)に、関西大学出身の柔道家である、
澤山宗海によって創始考案されました。

澤山は、重さ70キロの鉄アレイを楽々と持ち上げるほどの怪力で、
腕は丸太のように太かったと言われています。

戦中は軍人として活躍し、戦後は新しい武道のために尽力しました。

澤山宗海
1906 ― 1977
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「新しきを知るも、古きを識らざるは、進歩にあらず。
 外に得るも、内に持たざるは、進取にあらず」


を合言葉に、日本古来の空手、柔道、相撲から
無駄な部分を取り去り、自由に練習する方法を考えました。

そして、突打蹴の博技(打撃技)に対して、防具を着装して、
安全に、かつ自由に打ち合う乱(らん)稽古によって、試合を可能にしました。
拳足の技に対する防具の創案は、有史以来初めてでした。

澤山はあまり経済的には恵まれなかったらしく、
自分の道場を持つことはできませんでした。

その代わりに、本を残そう。そして、温故知新の主旨のもとに、
東洋の古典と現代心理学、生理学等をアレンジして、拳法を科学的に究明しよう。
という考えの下、毎日新聞社から「日本拳法」という書籍を刊行しました。

それまでの古流柔術、伝統派空手諸派は、秘伝の技を見られるのを嫌がり、
柔道以外には、あまり良書がありませんでした。
そのため、このような打撃の技術に関して公開する姿勢は、
日本武道史に残る革命的な行為だったと言われています。

その後、澤山門下である森良之祐は東京で日本拳法を広め、
自衛隊の徒手格闘技制定に深く関わっています。

森は後年独立したため、現在の日本拳法は大きく分けて、
関西の拳法会系(+連盟系)、関東の協会系と呼ばれることが
多いようです(細かく言うともっと多い)。

森師範が、生前に講演されていたのを聴いたことがありましたが、
とても穏やかな、落ち着きのある話し方をされる先生でした。

武道精神とは流派に閉じこもることではなく、多くの人と拳を交え、
豊かに生きるためのものです、とおっしゃっていたのが印象的でした。



【日本拳法の技術 -殴って投げてまた殴る-】

日本拳法の看板技は、直拳(ストレートパンチ)と直蹴(フロントキック)です。
この技術は、形だけを身につけるなら、最も簡単な部類に入るでしょう。
ですが、これを徹底して磨くところが大きな特徴です。

さらに日本拳法には投げ技があり、とどめの突き、関節技があります。
要約して言うと、日本拳法の試合とは、殴って蹴って倒してまた殴る
というものだと言えるでしょう。

ある意味、もっとも見栄えを切り捨て、実を取った武道だと言えます。

日本拳法


なお、打ち合いについてはパシンと一発入ると得点、
というところが伝統派空手と似ています。

このため、フルコンタクト空手のように、殴り続け蹴り続け、という試合にはなりません。
伝統派空手の読みあいのような要素もあります。

以下は大会の様子です。




【日本拳法を習いたい】

日本拳法の道場は、関東圏と関西圏以外ではあまりありません。
大学の部活としても、大きな私立大学以外には見られません。

ただし、自衛官になると、ほぼ同等の技術を習うことができます。
警察官や警備員も、似たような訓練をすることはあるようです。

職業として格闘する人のためのもの、という側面が強いので、
趣味や体操代わりにいいかと言われると、なんともいえません。
やるからには覚悟を決めてやったほうがいいと思います。

日本拳法をやる場合、格闘技をやることとほとんど同義と考えたほうがいいでしょう。
重い防具を装着して打ち合うので、練習は、時に総合格闘技のジムよりハードです。

事故もゼロではなく、倒れて頭を打つなどもないとは言えません。
ただし、防具のおかげで、打ち身や骨折などは比較的少なくおさえられています。
無理を押して参加するなどは控え、出来る範囲で努力しましょう。



【日本拳法で戦う・日本拳法と戦う】

あくまで私の個人的な交流範囲の話ですが、
日本拳法の選手は総じて強いです。

特に、道場で防具をつけずに練習している選手は、
近代格闘技の選手と遜色ありません。

これは突く、蹴る、投げる、寝技の全てが競技ルールに含まれており、
かつ、曲芸のような技術が、体系から大胆に排除されているためです。
競技スタイルも、比較的現実的なシーンに近いものとなっています。

さらに、練習には体力や体格を要求しますので、
競技者の身体能力は、比較的高く維持されています。

一般に知られる格闘技的な武道は、フルコンタクト空手ですが、
フルコンタクト空手は近年、一般の人にもできるよう、
幅広い指導法を確立しつつあります。
また、手で顔を打たないという、実戦から離れた競技ルールとなっています。

これに対して日本拳法は、現在も先鋭的に職業生活で活かすことを
前提としており、むしろフルコンタクト空手よりも格闘技的です。

日本拳法の上級者と喧嘩や決闘をやる場合、苦戦はまぬがれません。

近代格闘技の上級者であれば、互角以上に戦える可能性は十分にあります。
ですが、他の武道家が勝てる可能性はかなり低いでしょう。

もし、ノールールで日本拳法と勝負するなら、自分の得意技に加えて、
最悪、目突きと金的蹴りも考慮したほうがいいかもしれません。

ただし、そもそも目突き金的は入りにくいものです。
練習を繰り返さないとなかなか入らないことは、重々承知しておきましょう。

余談ですが、以前、あるジャーナリストに、こう相談されたことがありました。
「すごく治安の悪い場所に行くことになった。何か、相当ハードでもいいから、
 とりあえず強くなれる方法を教えてくれ。
 そんな都合がいいものが、そうそうあるとも思えないが」


迷わず私は大学の日本拳法部を紹介し、そこで半年ほど、
週に4回、練習に参加してもらうことにしました。
あと、危険地域では戦うよりも逃げろ、と言って、毎日ダッシュをするように薦めました。

彼が飛行機に乗る直前、少し手合わせをしましたが、半年前までド素人だった彼は、
見事な前蹴りと突きを繰り出せるようになっていました。

数年前、久々に再開したとき、彼は真っ黒に焼けた手で握手を求め、私にこう言いました。
「日本拳法のおかげで、カッパライもカツアゲも一撃だったよ」

残念ながら、世の中には、まだまだ暴力沙汰が無くなってはいません。
どうしても強くなる必要がある人には、日本拳法の門戸が開かれています。



【次回予告】
次回は「躰道」を取り上げます。



【注記】
この記事は、喧嘩や決闘を奨励するものではありません。
また、武道をやることで、強くなることを保障するものでもありません。
暴力行為の結果は、状況や体調やその他の偶然によって、大きく変化します。
そして当然ですが、実際の暴力行為は法によって厳しく罰されます。

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by neo_logic | 2008-12-23 18:41 | 世界の武術
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