今回はヤマオヤジの敵と味方として、サケ・フクロウ・ヒトを取り上げて語りたい。
【ヒグマとサケ】ヒグマと言えばサケであり、サケと言えばヒグマである。
私は道南の生まれだが、サケが産卵する時期に上流の川岸に行くと、まずヒグマの足跡が見られる。またクマに捕食されたサケの骨とかが見つかることもある。
道南のルールは見敵必殺であり、ヒグマは出てくるとすぐに捕殺されてしまう。それでも人の目を盗み、巧みにサケを捕っているのだろう。
ヒグマのサケ取りは冬眠直前になるのだが、この時のヒグマはまことにアホっぽい。
じーっと川を見てサケを待ち、30分サケ捕って2時間寝るを繰り返す。食っちゃ寝ヤロウである。しかも食べ飽きるとサケの骨をおもちゃみたいに振り回して遊んだりする。しかもこの様子は画像が見つからなかったが、どうも幸福感に満ちあふれているらしい。小学生か。
サケいないかなぁ。サケは卵からふ化し、泳げるまでのわずかな期間に抱かれていたわき水のにおいを記憶して、そのにおいをたどって上流に向かってきたのである。そのサケが下流では人間に捕まり、上流ではヒグマたちにつかまり、一番上に行っても産卵場が見つからないこともあり、まことに大変である。
ようやくわき水の匂いを見つけたサケはしばし瞑想し、そしてメスは砂利をはじき飛ばして卵を産むためひれを石の隙間に差し込む。オスはメスに寄り添い煙のように精子を放出する。産卵・受精は10秒で終わる。ちょいと淡泊なベッドインである。卵は川に育てられて孵化し、また海を目指していく。
近年はダムの影響でサケが減り、ヒグマもまたサケを補食しにくくなっている。人と動物との共存は様々なシーンで難しくなっている。自然を大切にして、サケを増やして食べ、ヒグマを増やして戦おうではないか。いや、その理屈はおかしい。
サケー
【ヒグマとフクロウ】なんの関係があんねん、と思われるかもしれない。ヒグマとシマフクロウは生息において場所を取り合うわけでなく、捕食しあうわけでもないからである。
しかし、北海道においてヒグマとフクロウの生息範囲は驚くほど近い。そして最大の共通点として、北海道における生態系のトップに君臨するという共通点がある。さらに先ほどの話にも関係するが、シマフクロウもサケを補食する。シマフクロウはサケのすべてを食べないので、その残りをクマがいただくこともある。したがって写真家やハンターは、産卵期のサケ、ヒグマ、シマフクロウのデータを同時に取得しようとすることもある。それらを役所や出版社、研究者に提供するのである。
また、農耕や牧畜を営まず純粋な狩猟・採集生活をしていたアイヌにとって、ヒグマやフクロウは共に同じ食料を食べる仲間であった。ヒグマやフクロウがそばにいると言うことは、アイヌにとっても今日の食事が得られるということでもあった。豊富な天然資源と共存していたアイヌにとって、取り合いという概念はない。
アイヌはヒグマのことを「キムンカムイ」つまり山の神と呼び、シマフクロウを「コタンコロカムイ」つまり村の神と呼ぶ。アイヌにとって両者は最も大事な神である。それは、自分たちと共に生きる貴重な存在だからなのである。
はろぅ。
【ヒグマとヒト】北海道のヒグマは生態系のトップにいるので、ほぼ敵はいない。
あえて言うなら、彼らの敵は冬の寒さと人間である。
基本的にヒグマは危険なので、人里で見つけたらやはり殺すよりほかない。この考え方は基本的には20世紀に入っても長く変化しなかったため、ヒグマは1930年代には1800頭くらいしかいなかった。その後農作物の増加に伴い増えていったが、それでも戦後の1950年代には3000頭程度しか生息していなかったようである。
しかし、1960年にはヒグマの保護管理をどうするか議論が始まり、主にアメリカの事例が参考にされた。たとえば毒殺を提唱した北海道政府の案は、国家官庁である林野庁の難色を受けて却下されている。
北米でクマの調査・保護に取り組んでいた国際クマ学会(←ここ、笑うところ)は、1970年に北海道のヒグマによる被害の深刻さと凶暴さを議題に取り上げ、駆除すべきか保護すべきかの討論が起こった。そして1983年には「ヒグマは北海道の重鎮的存在であり、行政的に保護すべきである」との結論となった。
1980年には春グマ駆除が認められて再び個体数が減少したが1990年にこれも禁止され、現在では首輪型発信器による電波追跡調査に加えてGPSなど衛星を利用した調査も進み、どのように保護すべきかが検討された。しかし研究者は少ないためこれらのデータは論文になっておらず、未だにヒグマを対象とした詳細な紹介はなされていない。今後に期待したいところである。
共存を願いつつも殺し合いを避けられない。
人がヒグマを友・敵・神と感じる最たる理由は、ここにこそあると言えよう。
なお、ヒグマとヒトとの果てしない戦いについては、また稿を改めて紹介したい。
【次回予告】次回は、アイヌとヒグマについて取り上げます。
ばいばーい。