秀作。
内容は典型的なパニックもの。
ある日奇病が発生して人が次々死んでいく。原因不明。
家族を守れ。という、これ以上ないほど典型的なハリウッド。
しかし演出がいい。
ともかく演出がいい。
この監督、とにかく演出がうまい。
映画は演出だZE、と言わんばかりの作りこみ方をしている。
たとえばカメラワーク。
人がビルから飛び降りるのをどう撮影しますか。
引いてビル全体を映すか、飛び降りる本人の目線か。
今まで私が見てきたのはこの二つです。
「ハプニング」では二種類の撮影方法でした。
どちらも、落っこちてくる先の路上にいる人の目線でした。
一つは、ビルを見上げたら、落下した人が迫ってくるというもの。
今一つは、路上を見たら落ちて来た人が跳ねているというもの。
この手法は、遠景や本人視点よりもはるかに臨場感がありました。
遠景だと、衝撃映像と同じです。他人の話です。
落ちる本人目線だと、落ちる人への感情移入が要求されます。
ビルから落ちようと思った人が何人いるでしょうか。
しかしながら、ビルを見上げた人はいくらでもいるわけです。
下を歩いたことがあるだけの人はいくらでもいるのです。
この、普通の人の目線で街を映しておきながら、突如唐突な事態が起こる。
こういう感覚を視聴者に与えるのは演出の手腕なのです。
ハプニングは、徹底して「事件の渦中にある当事者の視点」から
「異常事態」を映しこんだ作品なのです。
奇怪な怪物にスポットを当てたり、
死ぬ直前の人をえんえんドアップに映しこむことはありません。
まずは事件の渦中にある主人公ありきなのです。
「主人公の目から見た事件」が重要であり、
スプラッタをどう派手に見せるか、役者にどう怖がる演技をしてもらうか、
ではありません。
「ハプニング」のシナリオは極めて凡百ですが、
この品質の高い凝った演出が、作品全体の評価を凡百にしていないのです。
パニック映画監督は、この作品を三回見てからコンテを切れ。
あ、ちなみに同日にポニョ見てきました。
駄作です。ハプニングを見ましょう。
総点:82点
脚本:平凡
役者:上の中
演出:最高レベル